初めてのV:tR体験記

コンベンション当日

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 さて本番。各キャラクターの、概ね書き込み済みのキャラクター・シート、【長所】や【訓え】の説明を書いてあるサマリー、全体のルールのサマリーを準備し、ルールブックの訳やシナリオもきちんとプリントアウトした。準備は万端である。あとはやるのみ。

 今回、僕らのサークルが準備したのはRPGセッションを二つ、『ガープス・百鬼夜翔』と僕の『ヴァンパイア:ザ・レクイエム』だ。『ヴァンパイア』なんて WoD というマイナーシリーズの、しかも未訳ゲームだ。本気で宣伝しないと人は集まらないと思った。だから全力を尽くした。するとどうだろう。なんと、定員四名のところ、七名も希望してくれたのだ。新しいゲームに興味を覚える人は意外と多かったのである。残念ながら参加してもらえなかった人にも、いつかどこかでプレイしてほしい。

教訓:宣伝は重要。

 さて、予想外の人気に多少混乱しつつ、プレイヤー各人のRPG経歴など尋ねながら自分のペースを取り戻していった。皆RPGの経験はあるみたいで一安心。でも、「最近RPG始めたんです」って人はいなかったな。やはりそういう人には、敷居が高く見えてしまったのだろうか……。あと、声の大きい人がSTの近くに座って小さい人が遠くに座るという現象はどうにかならないものか。『ヴァンパイア』は席替えのタイミングも掴み難いし。

 世界観を説明している時に「今度はゴシック・パンクじゃないんですか?」という質問が出たのには驚いた。そう、今作はゴシック・パンクじゃないのだ。後で分かったことだが、そのプレイヤーは『メイジ:ジ・アセンション』(旧 WoD シリーズの一つ)の熱心な、そして上手なストーリーテラーだったらしい。札幌にも WoD ユーザーがいたとは。ちょっと嬉しかった。

 今回はお試しだし、全員に強いるにはいささか難し過ぎると思って触れなかった「ヴァンパイアにされた理由」を自分で作ったプレイヤーにも驚かされる。聞くと「ヴァンパイア物は結構好きなんで」だそうな。『ワーウルフ』なんかとは違って、人気ジャンルを扱っている強みである。この人は、セッション終盤でもいい働きをしてくれた。

 狙いがあって入れたノスフェラトゥだが、その隙間を見事利用したプレイヤーがいたのにも驚かされる。驚かされてばかりである。ノスフェラトゥは前作では例外無く醜い姿をしたヴァンパイアだったのだが、今作は「不気味な印象を与える」ということさえ守れば、それがどんな理由によるのでも構わなくなった。例えばあまりに美し過ぎて近付き難い、至極普通なのだが何故か不気味な雰囲気を持つ、などでいいのだ。そのプレイヤーが作ったのは「事故で喉を痛め、それ以来金切り声のような声しか出ない」という物だった。よく咄嗟に思い付くものである。

 優秀なプレイヤー達を相手に、セッションはつつがなく進む。途中多少PC間の絡みにまご付きが見られたが、コンベンションという場であることや、誰もやったことの無いシステムということを考えれば仕方の無いことだし、それにそんなに問題にもならなかった。出会い(獣のざわめき)、吸血の葛藤(飢えのルール)、謎の集団の襲撃(戦闘ルール)とチュートリアルを済ませ、いよいよ物語のクライマックス、ヴェントちゃんとの対面だ。ここでちょっと問題が起きた。ずっと悩んでいたのだが、結局、ヴェントちゃんの名前と口調は怖くて使えなかった。代わりにイーサンという名前にした(イーサンは『ワーウルフ』のディベロッパー。男の名なのだが、誰も突っ込まないでくれた……)。

教訓:日本人に馴染みの無い名前はストックしておくとよい。

 が、重要なのはそこではない。ちょっとヴェントちゃ……イーサンを強そうに演出し過ぎてしまったのだ。永い眠りから目覚めたというだけでそうなのに、先に逃げて行ったSTCをからからに乾かさせて登場したところ、プレイヤーはかなりの脅威を感じたらしい。幼い女の子だったのもそれに拍車を掛けたかも。イーサンが「カマリリャは今どうなっている」と尋ねると、しばし場面が中断し、プレイヤー発言での相談が続く。そして……

PC
「分かった、わらわが連れて行ってやろう。だが、少し時間が掛かるのじゃ。それまで図書館で本を読んでおれ。現代のことを知る必要もあるじゃろう?」
イーサン
「よかろう。だが、必ず明日、連れて行けよ?」
PC
「うむ」

翌夜

PC
「よし、着いて参れ」
イーサン
「何故地下に降りるのだ?」
PC
「地下からが近道なのじゃ」
イーサン
「そうか。しかし、この、下に溜まっている水は何だ? 妙な匂いがするが……」
PC
「……お主の背じゃ、沈んでしまうな。どれ、わらわが肩車してやる」
イーサン
「肩車か……懐かしいのう」
PC
「…………」
イーサン
「ほれ、早く連れて行け」
PC
「あ、ああ……」

地上では

公子
「その目覚めたとかいうヴァンパイアはこの下か?」
PC
「はい、地下に満ちているのがガソリンとも知らず、奴と一緒に地下へ降りて行ったと、この携帯にさっき連絡が。今では下で炎に包まれているでしょう」
公子
「愚かな。カマリリャなどもう一千年以上前に滅びたというのに」
PC
「…………」
公子
「よくやった。お前達には今後の便宜を図ろう。」
PC
「……ありがとうございます」

 かくして僕の初めての『ヴァンパイア』STは終わりを告げた。プレイヤーには好評を頂いたようで何よりである。協力してくれた人達にも感謝したい。

教訓:何とかなるものである。

初めてのヴァンパイア:ザ・レクイエム体験記 完結

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