初めてのV:tR体験記

テストプレイをすること

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 今回もシナリオを見ながら読み進めてほしい。
 シナリオ「Ties that Bind」(別ウィンドウで開きます)

翌日、本番八日前

システム説明

 さてさて、シナリオを詰めた後は軽くルールの確認なぞして、翌日テストプレイ。プレイヤーは旧作のSTまでやっていた人、旧作プレイヤーならやったことのある人、RPG自体に不慣れな人、と揃い、理想的な環境。恐々と説明を始める。何と言っても『V:tR』初STなのである。

「ええと、前作『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』を知っている人は、似ている所もあると思いますが、全部忘れてください。さて、まず、この世界のヴァンパイアというのは……」
「今回はチュートリアルも兼ねているってことで、全部の要素を使うわけではないし、ルールも簡易ルールを使います」簡易ルールというのはデモクロ用ルールのこと。
「キャラクターもこちらで用意してあります。これはオフィシャルページからダウンロードできるやつで……」

 などなど。必要な内容は言ったと思うが、メリハリが無かったからこっちの意図通りに伝わったかは不安。

教訓:説明の順番や強調する箇所などは、前もってちゃんと考えておくこと。必ず一度、紙なりテキストファイルなりに書くこと。人前で説明して見せてもいい。

 当たり前である。

 シナリオハンドアウトを提示してキャラクターを選んでもらう。PC1が少年漫画の主人公みたいな奴であること、PC2が(RPGに)慣れている人向けであることなども説明する。全員キャラクターを選び終えたら、キャラクターシートを渡す。の、だが、ここで重要な問題に気付く。デモクロ用キャラクターはヴェントルー、ディーヴァ、ギャンレル、メケトなのである。デモクロキャラクターのデータを眺めて、適当に割り振る。後で coyoteD20 氏に文句を言うと、「ノスフェラトゥ、前作と違うだろ? 違いを強調した方がいいと思ったんだよ」。なるほど、それはいい考えだ。でも「デモクロキャラクターを使う」と言っていたのだから、確認はしてください……。ちなみにデモクロでは、第2話で新登場するキャラクターがノスフェラトゥになる。

いざ、セッション

 続いてシーン1から順に……と思いきや、いきなり問題発生。PC1と4、会ったはいいけどすぐに別行動、PC1が学校の奥へ……。

 悪いことは重なるもの。シーン2。やって来たPC3が「オレはここを寝床にしていて……」と説明すると、いきなり襲い掛かるPC2。「まさかこいつが自分をヴァンパイアにした奴か?」と誤解したのは狙い通りなのだが、そこで怒りの狂乱に陥るか判定させたのが失敗。見事狂乱し、そしてプレイヤーがどこで怒りを収めるべきか分からなかったのか、ひたすら殴り掛かる。僕は何と無く「適当に自分で収めるだろう」と思っていたのだが、そんなの言わなきゃ分からんよな。そんなわけでPC2を抑え付けるPC4、姿を消して外へ逃げるPC3、という構図が出来上がった。因みに本当は、自分をヴァンパイアにした奴は見た瞬間に分かるのだが、今回はシナリオの都合で無視した。

 シーン3の最初にはこう書いてある。「4人が集まり、自己紹介をする」。4人集まっていない……。

教訓:プレイヤーに気付いてほしいことは露骨に示すべし。「PCが一緒に行動するのを前提にシナリオ作っているから、別行動するなら、再度の合流は自己責任ね」など。

 反省はともかく、実際のセッションではPC3が廃校の外に出てしまっている。まずはこれを何とかしよう。すぐに学校に戻るのなら、他のPCと合流してから事態を進められるわけだし。そう思ってまずは、カマリリャ復活を望む謎の勢力と遭遇させる。特殊能力である【訓え】を使って気付かれずに近付き、その話すところを聞くと、この辺にカマリリャ復活の鍵を握るヴァンパイアが眠っていることが分かる。それを聞いたPC3は慌てて廃校へ戻……りはせず、スラムへ血を吸いに出掛ける。STの陰謀でセッション開始時から怪我をしており、それを治すには血が必要なのだ。ルールの説明とドラマの火種(飢えて狂乱)の為に押し付けた物だが、裏目に出た。この時点で彼を次の戦闘シーンに登場させるのは諦める。セッションの場から去る決断をしたプレイヤーにも非があると、その時は思ったが、後から思えば、謎の集団を使ってボコり、学校へ追い返してもよかったかも。

教訓:血への飢えを擬似体験させるなら、その相手となる人間はセッションに関係する所に配置すること。

 こんなことは旧作でとっくに学んだ筈じゃなかったのか……? 自分の物覚えの悪さを呪う。

 場所を移して廃校の中。追い掛けっこを続けるPC達は、PC3がいつも睡眠を取っている部屋の前で議論を始める。お前をヴァンパイアにしたのは俺じゃないと言うPC3、それを信じない2のいたちごっこ。誤解の無いように言っておくと、PC2のプレイヤーはよく意図を汲んでロールプレイしてくれた。落とし所を提示し損ねたSTのミスである。

 PC達がどんな状況であれ、事態を進められるのがこのシナリオのいい所だ。よかろうと思ったタイミングで、学校中にトランペットの音を響かせる。皆賑やかなのを想像したみたいで「どんなメロディですか?」と聞かれるも、考えていなかったので「何かクラシックっぽい荘厳なの」と適当に答える。「トランペットにもクラシックっぽいのあるよね」と勝手に納得してくれるプレイヤー。ありがとう、s2 胸を撫で下ろす。これも後から coyoteD20 氏に聞いたのだが、トランペットの音が鳴るのは、ローマにありそうな楽器がそれしか思い付かなかったかららしい。

 以降(止めればいいのに)シナリオ通りに進めることを決めたSTは、件のカマリリャ復活を目論む集団を出す。カマリリャ復活の為に動いていることを明かしてから、PCを襲う。カマリリャとか全然関係無いし、というPC2はやはりPC3に攻撃を仕掛け、相手は四人なのにPC3もいない。そんな状況で勝てと言うのは無理な話で、抵抗はするも結局捕えられる三人。ここでSTC(ストーリーテラー・キャラクター)の口から、彼等の目的が地下に眠るヴァンパイアの復活であることを聞く。実はこいつら、全然強くないので、PCが三人でも協力して戦えば勝てたと思う。

教訓:PC間で対立があっても、まとめて問答無用で襲えば、協力せざるを得ない。

 一方PC3は、スラムで食事を済ませて戻って来る。するとそのタイミングでトランペットの音が響き、その音を追うことに。理化室の床から地下に入り、後ろから人が来る気配を察して先を急ぐ。よく分からない地下の道を進んで出たのはでっかいローマ風の神殿。興味は覚えつつも後ろから人が来るのでこっそりその辺に隠れる。当然、隠れる【訓え】も使用である。

 再び三人(+謎集団)。PC達がどんな状況であれ、事態を進められるのがこのシナリオのいい所で、結局縛られたPC達はそのまま地下へ連行されることに。ここでPC3が英雄的行動に踏み切る。神殿の中にある棺の蓋を開け、「そいつら(PC達)を放さないと、こいつに火を点けるぞ!」。逡巡するSCT。一緒に困るST。ここで火を点けられたら何のクライマックスも無くセッションが終わってしまう。かと言って、PCを放すと再び戦闘が発生して、その間にヴェントちゃんは滅ぼされるか、復活してSTCに加勢することになる。前者はつまらないし後者はPCが死んでしまう。ううむ。

 STCがPCを放さないのを受けてPC3はとうとう棺の中の人物、ヴェントちゃんに火を点ける。STは色々諦める。
「アチチチ〜」
 飛び起きるヴェントちゃん。「このヴェントちゃんに何をするんだル〜」と火を点けた不逞の輩をぼこぼこにする。と、ルールを使わず口で説明する。何しろ数百年を生きたヴァンパイアだ、プレイヤーも容易に納得してくれた。

 くどいようだが、PC達がどんな状況であれ、事態を進められるのがこのシナリオのいい所だ。状況が奇妙ではあるが予定のシーン5、6に従う。「カマリリャを復興させるル〜。まずは公子を追い落とすル〜」「お前等も手伝うル〜」「このレクイエム(ヴァンパイアとしての人生)をその為に使うル〜」身柄を拘束されたPC達は、殆ど選択の余地無くヴェントちゃんに与して、カマリリャ復活の為に暗躍するのであった。

 というところでセッション終了。セッション時間は説明を入れても三時間。当日、僕に与えられた時間は6時間半。まずい。普通、短い分には気にしない、というかむしろ推奨だが、これはあまりに短い。プレイヤーからは、「その時その時に、プレイヤーがすべきことが分からない」というアドバイスを貰う。当然である、そのように作ったシナリオなのだから。とは言え意図が伝わらずにプレイヤーに不満を抱かせては本末転倒なので、これも悩みの種となる。ヴェントちゃんは大好評だった。

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