V:tR がやってくる!

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 ようやく春を迎えて、八月頃の暑い季節が恋しいこの頃です。

不自由なゲーム

『ヴァンパイア:ザ・レクイエム』は不自由なゲームです。

 でも誤解しないでください。不自由だからこそ、楽しいゲームなんです。何故、不自由だと楽しくなるんでしょうか? その前にちょっと「どう不自由か」をお話しします。

 まず、血を吸わなくてはなりません。ヴァンパイア物なんだから当たり前? いえ、周りの(RPGの)ヴァンパイアを見渡してみてください。実際にセッション中に、血を吸わなくては「ならない」システムはありますか? きっと不自由だから嫌われたのでしょう。

 また、ヴァンパイアはたまに《狂乱》と呼ばれる状態に陥ります。あまりに激しい怒りを感じた時、血に飢えた時、日の光や炎(これもヴァンパイアの弱点なんです)などに晒される恐怖を覚えた時に、自分でも抑えられない衝動に突き動かされて破壊、吸血、あるいは遁走に専念してしまうのです。この間キャラクターはプレイヤーの手を離れ、まるでNPC(ワールド・オブ・ダークネスではSTC、ストーリーテラー・キャラクターと言います)と化してしまいます。

同じシナリオでも……

 さて、では、これがどう面白さに繋がるんでしょうか? 一見したところセッションを壊すばかりで、ちっとも面白くなさそうです。

 でも想像してみてください。

 仲間のキャラクターが《狂乱》してしまって慌て、困っているところ、自分のキャラクターが〈内なる獣〉にうったえてそいつを脅し付ける。すると、相手の〈獣〉はすごすごと鳴りを潜めて、事態は落ち着く。プレイヤー、そしてストーリーテラーと顔を見合わせて、安堵の溜息を吐く。

 また、こんなこともあるでしょう。

 今まで耐えに耐えてきた飢えが、ストーリー進行上重要な人間の前で爆発してしまう。血を求めて跳び掛かる自分のキャラクター。そこで機転を利かせて仲間が路上の人間を切り裂き、その匂いに釣られて自分のキャラクターもそちらへ、そして血をすする。渇きが癒えると人間の血を「また」すすってしまったことを悔やむロールプレイをし、でもストーリーは何とか進んでいく……。

 ゲームマスターが事前に考えていた以上の、まさに「みんなで作るストーリー」です。

 そして考えてください。こういった不測の事態に対処できるのなら、その他の、ルールによるイレギュラー以外にも対応できるのです。つまり、自分のキャラクターの(他では許されないような)あんな設定やこんな設定が使えて、しかもストーリーに組み込まれていくのです。そんな、他では見ないような実に「ヴァンパイアらしい」設定の例も、ルールブックやサプリメントにたくさんあります。

 そこで次回は、そんな変わった設定をちょっと紹介するのと、プレイの実際を覗いてみたいと思います。

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