ワールド・オブ・ダークネス紹介

『ワールド・オブ・ダークネス(WoD)』を説明するのは、実は難しくない。
 これは人の弱いところ、心の闇を描くホラーゲームだ。

 多くの場合、セッションでは化け物が登場すると思う。ルールブックでは幽霊を作るルールが紹介されているけど、もちろんそれ以外の化け物だって構わない。更に、日常のようだけどどこか違う風景、謎の組織、遭難などの危機的状況、ちょっとサイコなお隣さん、はては「そんな気がするただの日常の景色」といった、現実に存在する物ということも考えられる。

 ただ、『WoD』の焦点は、そういった物に遭遇して慌てふためく一般人をプレイするところには、無い。
 非日常的な事件に相対してみんなで頑張って対処する。やっつけたり、危機を脱したり、うまく共存していく方法を模索する。
 その「あと」にこそ、このシステムの描きたかった物が潜んでいるんだ。

 何の変哲も無い、「唯一つ普通の人と違うのは……」なんて常套句すらいっさい付かない人間が、化け物なんていう大変な物に対処するんだから、どうしてもなりふり構っていられない。死に物狂いで思い付くこと何でもする筈だ。幽霊の言わんとするところを知る為に、棺桶を開けたりね。
 でもそれは、生きる為には仕方無いのだけど、でも日常の道徳に照らして「悪くない」と言えることだろうか。「正しい」と胸を張れるだろうか。
「危機的状況じゃあ仕方無いだろ、人間だもの、生き物だもの」と思ってしまう瞬間、正当化の瞬間を『WoD』では「道徳を失う」と呼んで重要視している。

 勘違いしないでほしいのは「そこで道徳的に正しい選択をする」ゲームではない、ということだ。
 大げさに言えば、そこの選択はどうでもいい。悪い人間でもいい人間でも、好きなように演じればいい。
 大事なのは、その様子をきちんと描けるかどうかだ。道徳を失った時に「らしい」セリフを言えるか。クライマックスで魅力的な葛藤ができるように、序盤からキャラクターを演じていけるか。恋人を救う為にその恋人を殺す、それに説得力を持たせられるか。
 それが重要なんだ。

 もう分かったろう?
 プレイヤーにとっては、「どんな物語が展開されるか、キャラクターの行動がそれにどう影響を与えるか」は、他のゲームほど重要でない。
 たとえ一本道のシナリオでも、あるいは逆に殆ど展開の決まっていないアドリブ重視のシナリオでも、その中でクライマックスを睨みながらキャラクター個人やPC・NPCとの関わりを丁寧に描いていくことがプレイヤーのすることで、それこそ腕の見せ所なんだ。

 説明を聞いただけではピンとこない、実物を見てみたい、という人は『リング』(小説でも映画でも)を見るといいんじゃないかと思う。

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