初めてのV:tR体験記

s2、バカな依頼を受けること

XX月XX日

 coyoteD20 氏に、一月後に行われるサークル合同コンベンションでイベントをやれと言われる。これは、複数のサークルが各々企画を用意し、客を取り合ってその日一日を過ごす、というものだ。朝のうちに客は固定されるので、客引きに失敗すると一日暇、ということにもなりかねない。

 時間が無い、と断ったが、「じゃあオレが企画全部やるから」と言われ、それならとOKする。後になって激しく後悔する。いや、後悔じゃない。後悔したら報われないので、反省にしておこう。

 その日早速、飯を食いながら作戦会議。主催者からは「各サークル10人の客を受け入れられるようにしてほしい」と言われているので、前々から冗談で「10人ゲヘナはどうか」という話は口に上っていた。『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』の終末シナリオ集『Gehenna』に手を加えて、10人のプレイヤーでもできるようにするのである。「それぞれにアンテデルヴィアンを割り振って、セリフを書いた台本も手渡して、演劇みたいにやるのはどうか」と僕が言う。が、考えてみれば coyoteD20 氏は『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』が好きでないばかりか、殆ど興味も無いのでそんな企画は、準備の殆ど全部を彼に頼まなければならない今回は無理と悟る。もう一人参加する Rak 氏と協力し、 Rak 氏が『Gehenna』を慣行、途中で滅んだキャラクターを僕が『ヴァンパイア:ザ・レクイエム(以下 V:tR)』で回収していく、などとアホな企画が上っては消えていく。

 ふと coyoteD20 氏が口を開いた。「じゃあこういうのはどうだろう。『V:tR』のデモクロ第一話をやるんだよ。これは鮮烈だぞ。やっぱりこういう新作をやっているというところを見せないと」。ニヤリ、思わず僕も、会心の笑み。何しろこれで、準備はもう終わったも同然(我々は、別のストーリーテラーの下で既にデモ・クロニクル第一話をプレイしていたのだ)、その上他サークルに強烈なインパクトを与えることができる(「英語のRPGやっているんだ、凄いね!」)なんて。「それいいですね。それでいきましょう」二つ返事で引き受ける s2 だった。この決断が、後々の地獄を生むのである。とは言えここでは、うちのサークルの出し物が結局RPGセッション二つに決まり、しかも僕は準備殆ど無し、ということで大喜びしていた。

 ここで少し用語を解説しておいた方がいいだろう。『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』及び『Gehenna』は“旧”ワールド・オブ・ダークネス(以下 WoD)なので、まあそういうシステムとシナリオ集がありました、程度に留めておく。アンテデルヴィアンはそのゲーム用語。世界レベルでかなりやばいヴァンパイア達と思ってください。ストーリーテラーというのはいわゆるゲームマスターのこと。STと略されたりもする。デモ・クロ(ニクル)というのは重要だから是非憶えてほしい。『V:tR』を作っているホワイトウルフ社では、WoD 及び『V:tR』(そして今では『ワーウルフ:ザ・フォーセイクン』『メイジ:ジ・アウェイクニング』も)の簡易ルールと、すぐに遊べる優れたシナリオを無料ダウンロードできるようにしているのだ。WoD ではキャンペーンのことをクロニクル(史劇)と言うので、この無料シナリオをよくデモクロと呼んだりする。余談だけど、これ、日本語訳がアトリエサードとか新紀元社とかロール&ロールのサイトに載らないかなあ。「ロール&ロール」本誌やSPでもいい。

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